「ドラムをやってみたいけど、自分にはリズム感がないから無理かも…」
なんて、思っていませんか?
ドラム歴20年の私ですが、リズム感が無いから…と尻込みしてる人を沢山見てきました。みんなリズム感は生まれ持った才能のように思っています。
確かにドラムはベースと一緒に「リズム隊」と呼ばれます。それほどリズムが大切な楽器。リズム感が無いからと敬遠する気持ちは分かります。
「リズム感がない私が音楽教室などに習いに行っても全く身にならないのでは…?」と感じることでしょう。
しかし、諦めるのはまだ早いです。
実は、リズム感というのは、正しい知識とトレーニングによって、後からでもしっかり伸ばせるスキルなんです!
「え、本当に?」と思った方。その気持ち、とてもよく分かります。筆者自身も昔からリズム感が無いと言われ続けてきました。
しかし、リズムは感覚的な部分もありますが、同時にちゃんと「理論」として理解できるもの。そして、その理論を知った上で練習すれば、誰でも心地よいビートを刻めるようになります。
この記事では、ドラムを始めたい方や、音楽のリズムについてもっと深く知りたい方に向けて、絶対に押さえておきたいリズムの基礎知識を、できるだけ分かりやすく解説していきます。
具体的には、
- そもそも「リズム」ってなんだろう?
- 音楽の速さを決める「拍」
- 楽譜を読むための区切り「小節」
- 音の長さを表す「音符」
- リズム感を良くするカギ「表拍」と「裏拍」
これらの基本的な考え方を、一つずつ見ていきましょう。
そして記事の後半では、楽しみながらリズム感を鍛える方法もご紹介します。
最後まで読んでいただければ、きっと「リズム感って、こういうことだったのか!」「こうすれば身につけられるんだ!」という発見があるはず。
「何となく理解しているよ」という方も、しっかり言語化して理解しておくことで、リズムへの解像度がますはずです。
ぜひ最後までお付き合いください。
1. そもそも「リズム」とは
まずは基本中の基本、「リズム」という言葉について考えてみましょう。
リズムの定義
リズムは「音楽の三要素」の内の1つです。
- メロディー(旋律)
- ハーモニー(和声)
- リズム
リズムとは具体的に何かというと、少し固い言い方をすれば「音の時間的な配置やパターン」のこと。音の長さや強弱、音が鳴らない部分(休止)が、ある種の規則性を持って分割され、1つの形となり、繰り返されることで生まれる、時間的な流れや動き、と説明できます。
ちょっと抽象的過ぎて、何か分からないかもしれません。
でも、難しく考えすぎる必要はありません。私たちの身の回りには、リズムがたくさん溢れています。
- 心臓の鼓動「ドクン、ドクン…」
- 時計が規則正しく時を刻む「チクタク、チクタク…」
- 歩くときの足音のテンポ「タン、タン、タン…」
では、音楽の中でリズムはどんな働きをしているのでしょうか?
リズムの役割
メロディーやハーモニーを整理する。
私はリズムを「メロディーとハーモニーを時間通りに配置するための、いわば接着剤や設計図のようなもの」だと考えています。
どんなに美しいメロディーやハーモニーがあっても、それらが何の規則性もなくバラバラに鳴っていたら、それは心地よい音楽にはなりません。 ただの雑音に聞こえてしまうでしょう。
リズムは、「この音はこのタイミングで、この長さで鳴らそう!」という指示を与え、音たちを時間軸に沿ってきれいに整理整頓してくれる、非常に大切な役割を担っています。リズムがあるからこそ、メロディーやハーモニーが活かされ、一つのまとまった「音楽」として成立するのです。
曲全体の雰囲気を決定づける。
さらに、リズムは曲全体の雰囲気やノリを決定づける大きな要素でもあります。
アップテンポでノリの良い曲は、速いリズムで短い音符が多く使われ、聴いているだけで体が動き出すような感覚に。
逆に、ゆったりとしたバラードでは、遅いリズムで長い音符が中心に使われ、落ち着いた雰囲気や感情を表現します。
リズムは音楽の骨組みを作り、曲の表情やエネルギーをコントロールする、なくてはならない要素なのです。
「リズムが大事なのは分かったけど、やっぱり掴みどころがない…」と感じる方もいるかもしれません。大丈夫です。そのために、リズムをより具体的に理解するための要素、「拍」「小節」「音符」について、これから見ていきましょう!
2. リズムの基本単位「拍(はく)」を理解しよう
リズムを理解するための最初のステップは「拍(はく)」です。
拍はリズムの基本的な単位
簡単に言えば、拍はリズムを感じる上での基本的な単位のことです。心拍のようなものと考えてみてください。
音楽に合わせて自然と手拍子をしたり、足でリズムを取ったりするときの、その一打一打が「拍」に当たります。
よく、音楽に合わせて「1(イチ)、2(ニ)、3(サン)、4(シ)…」とカウントしますよね。この「イチ」「ニ」「サン」「シ」というカウント1つ1つが、それぞれ1拍を表しています。
拍が曲のテンポ(速さ)を決める。
そして、この拍と拍の間の時間の長さが、曲のテンポ(速さ)を決めます。
例えば、「イーーチ、ニーーイ、サーーン、シーーイ」と非常にゆっくり数えるのと、「イチニサンシ! イチニサンシ!」と速く数えるのでは、曲の雰囲気が全く違いますよね。
拍の間隔が長ければ(ゆっくり数えれば)スローテンポな曲に、短ければ(速く数えれば)アップテンポな曲になります。この拍の間隔こそが、曲のスピード感を決定づけているわけです。
ちなみに、メトロノームに表示されている「BPM」という文字。これは「Beats Per Minute」の略で、「1分間に何回、拍(Beat)があるか」を示しています。BPM 60なら1分間に60拍、つまり時計の秒針と同じ速さ。BPM 120ならその倍の速さ、という具合です。
3. 楽譜の区切り「小節(しょうせつ)」を理解しよう
次に理解しておきたいのが「小節(しょうせつ)」です。楽譜を見たことがある方なら、お馴染みかもしれません。
小節は「拍」の集まり
小節は、先ほど説明した「拍」が、いくつか集まってできた、ひとまとまりの単位のこと。
「音楽の流れを分かりやすく区切るためのグループ」といったイメージです。
楽譜を見ると、縦の線(小節線)で区切られています。この縦線と縦線の間のスペースが「1小節」にあたります。
小節の役割
楽譜を読みやすくする。
この小節という区切りがあるおかげで、楽譜がとても読みやすくなります。どこからどこまでが一区切りなのかが一目で分かり、自分が今、曲のどのあたりを演奏しているのか把握しやすくなります。文章でいう句読点のような役割ですね。
拍子を明確にする
さらに、小節は「拍子(ひょうし)」を明確にするためにも重要です。
楽譜の最初の方に、分数のような形で書かれている記号を見たことはありませんか? 例えば「4/4」とか「3/4」とか。これが拍子を表す拍子記号です。
この拍子記号は、「1つの小節の中に、どの種類の音符が何拍分入りますよ」という、その小節のルールを示しています。
最もよく使われる「4/4拍子」(よんぶんのよんびょうし)では、「1小節の中に、4拍入る長さですよ」という意味です。もっと簡単に言えば、「1、2、3、4」と4つ拍を数えたら、それで1小節が終わりですよ、ということです。
世の中のポップスやロックの多くは、この4/4拍子で作られています。なので、まずはこの感覚に慣れることが大切です。
もちろん、音楽には色々な拍子があります。ワルツなどで使われる「3/4拍子」(1小節に3拍)や、少しゆったりした雰囲気を持つ「6/8拍子」(1小節に8分音符が6つ分)など。
もっと複雑な拍子もありますが、まずは基本の4/4拍子をしっかり押さえておきましょう。
曲の構成と小節
さらに言えば、多くの曲では、この小節が4つや8つ集まって、一つのメロディーのフレーズや、コード進行のまとまりを作っていることが多いです。「Aメロが8小節、Bメロが8小節、サビが16小節…」といった具合ですね。
小節を意識できるようになると、曲全体の構成、いわば「設計図」のようなものが見えてきて、音楽を聴いたり演奏したりするのが、もっと面白くなりますよ。
4. 音の長さを表す「音符(おんぷ)」を理解しよう
さあ、次は「拍」「小節」と並んで重要な「音符(おんぷ)」について見ていきましょう。楽譜などでよく見る、おたまじゃくしのような記号のことです。
音符は音の「長さ」と「高さ」を表す
音符は、基本的には「音の高さ」と「音の長さ」を表す記号です。今回はリズムなので、特に「音の長さ」の方に注目して解説していきます。
ここでも、一番よく使われる「4/4拍子」(1小節=4拍)を前提として話を進めます。
よく使われる音符
4分音符(しぶおんぷ)

これが音の長さの基本単位となることが多いです。長さはちょうど「1拍分」。 なぜ「4分」かというと、4/4拍子の1小節(=4拍)を4つに分割した長さだから、と考えると覚えやすいでしょう。
音楽に合わせて「タン、タン、タン、タン」と手拍子する、あの一打分の長さが4分音符の長さです。
8分音符(はちぶおんぷ)

これは「半拍(0.5拍)分」の長さ。4分音符のちょうど半分の長さです。名前の由来は、1小節(=4拍)を8つに分割した長さだから。
ドラムで最初に練習することが多い「8ビート」は、ハイハットシンバルをこの8分音符で「チッチッチッチッ」と刻むのが基本なので、そう呼ばれています。ドラマーにとっては非常によく使う音符です。
16分音符(じゅうろくぶおんぷ)

これはさらに短く「1/4拍(0.25拍)分」の長さ。8分音符のさらに半分、4分音符の1/4の長さです。 名前はもちろん、1小節(=4拍)を16個に分割した長さのため。ファンクなどで使われる「16ビート」は、この16分音符がリズムの主体となります。
他の主な音符
もちろん、もっと長い音符もあります。
2分音符(にぶおんぷ)

これは「2拍分」の長さ。四分音符2つ分の長さです。1小節(=4拍)を2つに分割した長さなので二分音符となります。
全音符(ぜんおんぷ)

これが基本の音符の中で一番長く、「4拍分」の長さ。つまり、4/4拍子だと、ちょうど1小節分の長さになります。
ドラムと休符
ただ、ドラムの場合、音を長く伸ばし続けるというよりは、叩いた瞬間の音が重要になることが多いので、2分音符や全音符そのものを見る機会は、メロディー楽器などに比べると少ないです。
むしろドラムの楽譜でよく目にするのは「休符(きゅうふ)」の方でしょう。休符は、その名の通り「音を出さない(休む)長さ」を示す記号です。四分音符と同じ長さ休むなら「四分休符」、八分音符と同じなら「八分休符」というように、それぞれの音符に対応した休符があります。ドラムのカッコよさは、音を出すタイミングだけでなく、「どこで音を出さないか(休むか)」というのも、非常に重要なポイントになります。
以下、主な休符です。ぜひ覚えておきましょう。

ここまでで、「拍」「小節」「音符」という、リズムを形作る基本的な要素が、なんとなくイメージできたでしょうか?
5. リズム感アップの鍵!「表拍」と「裏拍」を知ろう!
ここからはリズム感をグッとレベルアップさせるための、非常に大切なポイントについてお話しします!。
それは「表拍(おもてはく)」と「裏拍(うらはく)」の理解です。
「なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、大丈夫です。考え方を整理すれば、決して難しくありません。
表拍とは
おさらいをしましょう。拍は「1、2、3、4」というカウントの数字の部分のことです。実はこの数字の部分で感じていたリズムが「表拍」です。
表拍はいわば、拍の頭、メインのタイミングのことを指します。手拍子で「パン、パン、パン、パン」と叩く、その「パン」が鳴る瞬間です。
裏拍とは
では、「裏拍」とは何かというと、その表拍と次の表拍の、ちょうど真ん中にあたるタイミングのことです。
「1、2、3、4」と数えるときに、もう少し細かく、間に「ト」のような音を入れて「1 ト 2 ト 3 ト 4 ト」と数えてみてください。このときの、数字ではない「ト」の部分。これが「裏拍」のタイミングにあたります。
8分音符で考えると分かりやすいですね。1拍の中に8分音符は2つ入りますが、その2つ目の8分音符のタイミングが裏拍です。

なぜ裏拍が大事なの?
裏拍を感じることが大事な理由は、裏拍を感じる事で表拍のタイミングもしっかり取れるようになるからです。
表拍だけを意識していると、ただ何となく「1・2・3・4」と、ある意味当てずっぽうにリズムをとることになります。そうするとリズムが平坦になったり、ヨレて聞こえてしまいがちです。
しかし、裏拍までしっかり意識できるようになると、表拍のタイミングを狙うことが出来るようになります。演奏全体の安定感が増すことにも繋がるのです。
「そんな裏拍みたいな細かいタイミング、意識できるわけない…」と不安になるかもしれません。確かに、最初は難しく感じると思います。でも、これも練習によって必ず誰でも身につけられる感覚です!
6. 実践!今日からできるリズム感トレーニング!
さあ、リズムの基本的な考え方が分かってきたところで、実際にリズムを感じて、リズム感を鍛えるトレーニングをやってみましょう!
- 好きな曲(最初はテンポがゆっくりで、リズムが分かりやすい曲がおすすめ)
- またはメトロノーム(スマートフォンのアプリで十分)
ステップ1:まずは「表拍」を感じてみよう!
- まず、用意した曲を再生するか、メトロノームを鳴らしてみましょう。(テンポはゆっくりめ、BPM60〜80くらいから始めると良いでしょう)
- 曲やメトロノームのテンポに合わせて、心の中で「1、2、3、4、1、2、3、4…」とカウントしてみましょう。声に出してもOKです。
- カウントに慣れてきたら、その「1」「2」「3」「4」の数字のタイミングで、手拍子をしてみましょう。「パン、パン、パン、パン…」という感じです。
これが「表拍を感じている」状態です。まずは、この表拍をしっかり、安定して捉えることが基本です。焦らず、心地よくできるまで続けてみてください。
ステップ2:いよいよ「裏拍」を感じるトレーニング!
さあ、ここからがリズム感アップの本番! 裏拍を感じる練習に挑戦です!
- 先ほどと同じように曲やメトロノームに合わせて、「1、2、3、4」ではなく、今度は間に「ト」を入れて「1 ト 2 ト 3 ト 4 ト」と数えてみましょう。八分音符の速さを感じるイメージです。
- 最初は、この「1ト2ト3ト4ト…」と口ずさむだけでも大丈夫。まずは言葉でリズムに慣れ、テンポについていけるようにしましょう。
- 慣れてきたら、今度は「ト」のタイミングで手拍子をしてみましょう! 「(1)パン(2)パン(3)パン(4)パン…」というタイミングになるはずです。数字の時は手は叩かず、「ト」の時だけ叩きます。
これは、最初はかなり難しく感じるはず。 最初は難しく感じるのが普通なので、安心してください。タイミングがズレたり、わけが分からなくなったりするかもしれません。でも、諦めずに続けてみましょう!
焦らず、とてもゆっくりなテンポで、何度も繰り返すこと!繰り返す内にだんだんと感覚がつかめてきます。
最初はBPM 50とか、もっと遅くても構いません。確実に「ト」の裏拍で手を叩けるようになるまで、じっくり取り組んでみてください。
この裏拍を意識した手拍子の練習は、地道ですが効果は抜群です!
裏拍が感じられるようになると、自然と表拍の位置もより正確に感じられるようになります。表と裏、両方のタイミングをしっかり感じられるようになって初めて、本当の意味での安定した「リズム感」が身についてくるのです。
どうでしょうか? リズム感って、ただの才能ではなく、後からでもちゃんと鍛えられるスキルなんだ、ということが少し見えてきたのではないでしょうか?
7. 【応用編】楽しみながらリズム感を鍛えるヒント
とはいえ、「地道な手拍子練習だけだと、ちょっと飽きてしまいそう」という方もいるかもしれませんね。そんな方のために、楽しみながらリズム感を鍛える裏技を一つご紹介します。
それは リズムゲームを活用することです。
音楽ゲームや、リズムに合わせてボタンを押すタイプのゲーム、遊んだことはありますか? 実は使い方によってはゲームすらもとても良いリズム感トレーニングになるんです!
例えば、家庭用ゲーム機やスマートフォンのアプリには、たくさんのリズムゲームがあります。
ポイントは、ただ何となくプレイするのではなく、音符や表裏の拍を意識しながらやってみることです。
- 「あ、このタイミングは4分音符だな」
- 「ここは8分音符の裏拍でボタンを押すんだな」
- 「この曲は4/4拍子で進んでいるな」
というように、表拍や裏拍、音符の種類などを考えながらプレイすると、ただ楽しむだけでなく、リズムの理解を深めるトレーニングになります。
ゲームによっては、難易度が上がると、裏拍をしっかり感じないとクリアできないような構成になっているものも多いです。そういった課題に挑戦する中で、自然と裏拍を取る感覚が養われていくことも期待できます。
まとめ
リズム感は鍛えられるというテーマのもと、リズムについて、そしてリズムを構成する「拍」「小節」「音符」について解説しました。
「リズム感は生まれつきのものだけじゃないんだ」「自分でもトレーニングで身につけられるかもしれない!」と思っていただけたら幸いです。
これらの考え方は、ドラムを叩くためだけでなく、音楽を聴いたり、歌ったり、他の楽器を演奏したりする上でも、きっと役に立つはずです。
難しく考えがちですが、リズムは特別なものではありません。いつも聴いている音楽の中にはもちろん、あなたが歩く足音、心臓の鼓動、雨の音… 私たちの世界は、実はリズムで満ち溢れています。
ぜひ、今日知ったことを少しだけ頭の片隅に置いて、普段聴いている音楽のリズムや、日常の中にある音のパターンに、いつもより少しだけ耳を澄ませてみてください。「あ、この曲は4拍子だな」「このドラム、裏拍で何か鳴らしてるな」なんて、小さな発見があるかもしれません。
そうやって、日々リズムを意識すること。それ自体が、素晴らしいリズム感トレーニングになります。
そして、そうやって少しずつ育まれたあなたのリズム感は、いつかあなたがドラムスティックを握る時、あるいは他の楽器で誰かと音を合わせる時、本当に頼もしい味方になってくれることでしょう。
まずは、好きな曲に合わせて、表拍や裏拍で手拍子をしてみることから始めてみましょう!
リズムを知ることで、あなたの生活がより快活に、リズミカルになることを期待しています。
コメント