「ドラム、かっこいいな…!叩いてみたい!」
そう思ってドラムを始めようとするあなた、素晴らしい感性の持ち主です。筆者はドラムに注目するだけで、ドラマーとしての才能があると常々断言しています。
しかし、いざ始めようとすると、
- 「何から手をつければいいの?」
- 「楽譜も読めないし、難しそう…」
そんな不安が頭をよぎるでしょう。ドラムは打楽器の集合体。何を叩けばいいのか、どうやったら良いのか迷ってしまう気持ち、よく分かります。
何から始めたらいいのか、少し調べてみると必ずと言っていいほど目にするのが「まずは8ビートから」という言葉。
- 「まずは8ビート…って、そもそも8ビートって何なんだろう?」
- 「8ビートができたら、どんな良いことがあるの?」
- 「本当に初心者でも叩けるようになるの?」
そんなあなたの疑問や不安に、現役ドラム講師である私が、お答えします!
この記事を読めば、8ビートの基本、ドラム講師の私が最も効果を感じている具体的な練習方法、そして最終的には好きな曲と合わせて演奏できるようになります。
この記事を読み終える頃には、あなたはもう「ドラムって難しそう」なんて思っていないでしょう。代わりに、「早くスティックを握りたい!」「あの曲に合わせて叩いてみたい!」そんなワクワクした気持ちでいっぱいになっているはずです。
一緒に8ビートの世界へ飛び込み、今日からあなたもドラマーへの第一歩を踏み出しましょう!
「8ビート」とは
ドラムの世界で最も基本的で、最も重要と言っても過言ではないリズムパターン、それが「8ビート」です。
8ビートと呼ばれる由来
8ビートは「8分音符」 を基本として構成されています。
8分音符は、基本的な長さとされる4分音符の半分の長さの音符です。これを一定のテンポで「チチチチ」と刻んでいくのが、8ビートの骨組みとなります。
8分音符については下記記事を参照してください。
8ビートの譜面

楽譜のように、「8分音符の刻み」を土台にして、手足(スネアドラムやバスドラム)で様々なリズムパターンを加えていくのが、8ビートと呼ばれるリズムなのです。
難しく考えなくて大丈夫です。 要するに、一定のテンポで「チチチチ」という刻みをキープしながら、他の太鼓を「ドンッ」「タンッ」と加えていく。
これが8ビートの基本的な考え方です。
8ビートを最初に練習するメリット
なぜ多くのドラム教則本やレッスンで、最初に8ビートが取り上げられるのには、ちゃんとした理由があります。
最初に8ビートを習得することで、2つのメリットがあります。
1:あらゆる音楽ジャンルの基礎で、汎用性がとにかく高い
8ビートは、ロック、ポップス、ファンク、ブルース、カントリー、場合によってはジャズなど、本当に多種多様な音楽ジャンルで使われています。 まさに、ドラムの「公用語」のような存在なのです。
あなたが好きなあの曲、テレビで流れているあの曲、ライブで盛り上がるあの曲… よく聴いてみてください。その多くに、この8ビートが使われているはずです。
逆に言えば、8ビートをしっかりとマスターすれば、演奏できる曲の幅が一気に広がります。
極端な話、安定した心地よい8ビートを叩けるドラマーは、それだけで多くのバンドから「一緒にやりたい!」と思われる存在になれるのです。それほど、この8ビートは音楽の土台として重要視されています。
基本だからこそ、奥が深く、そして価値があります。
2:憧れの曲に合わせて叩けるようになり、ドラムの楽しさを即実感できる
ドラムを始めたいと思うあなたは、きっと音楽が大好きで、 お気に入りのアーティスト、何度も聴いている曲があるはず。
8ビートを習得すれば、すぐにその大好きな曲に合わせてドラムを叩くことができるようになります!
もちろん、最初からCDと全く同じように叩くのは難しいかもしれません。でも、まずは基本の8ビートだけでもいいんです。曲の流れに合わせて、あなたがビートを刻む。それだけで、まるで自分がバンドの一員になったかのような高揚感と楽しさが得られます!これこそが、ドラムを演奏する醍醐味であり、最高のモチベーションになります。
「楽譜が読めなくても」「難しいことができなくても」、まずは8ビートで曲に参加できる。曲と合わせることで、「できた!」という実感、そして「楽しい!」という感情が、あなたをドラムの世界にもっと深く引き込んでくれるはずです。
筆者自身、講師として初心者の生徒にはまず8ビートを教えて、最後は曲に合わせてもらいます。そして、8ビートだけでも音楽と合わせていると実感してもらえた時、生徒のみんなが1番感動を味わう瞬間だと感じています。
まずはこれ! 8ビートの超基本パターン
8ビートの重要性と魅力が分かったところで、いよいよ具体的なリズムパターンを見ていきましょう! ここで紹介するのは、数ある8ビートの中でも、最も基本とされるパターンです。まずはこれを完璧に叩けるようになることを目指しましょう!
8ビートの基本パターン

いきなり譜面が出てきてもどうやって叩いたらいいか分かりませんよね。まずは上段、中段、下段の3つに分けて、それぞれどこを叩けばいいか解説します。
上段はハイハットを叩きます。利き手(通常は右手)で、8分音符を均等に「チッチッチッチッ…」と刻み続けます。これが8ビートの基本となる刻みです。ライドシンバル(右側にある大きなシンバル)で代用することも多いです。
中段はスネアドラムを表しています。左手(右利きの場合)で、2拍目と4拍目の頭に「タンッ!」とアクセントを入れます。これがバックビートと呼ばれる、リズムにノリを与える重要な役割を果たします。
下段はバスドラムを鳴らします。右足(右利きの場合)で、1拍目と3拍目の頭に「ドンッ!」と力強く踏みます。これがビートの土台となる低音を生み出します。
- 右手(ハイハット): 常に8分音符で「チッチッチッチッ…」と刻む。
- 左手(スネア): 2拍目と4拍目に「タンッ!」
- 右足(バスドラム): 1拍目と3拍目に「ドンッ!」
これを同時に行うのが、最も基本的な8ビートです。最初は思うように動かないかもしれませんが、焦らずゆっくり練習していきましょう!
ハイハット・スネア・バスドラムがどの楽器か、また譜面の表記については以下の記事を参照願います。
具体的な練習方法:あなたに合った進め方を見つけよう!
基本パターンが分かったら、次は実際に体を動かしてみましょう!
ここでは、私がレッスンで教えている経験から、効果的だと感じている2つの練習アプローチを紹介します。どちらが自分に合っているか、試してみてください。
練習法1:手足を同時に動かすアプローチ
これは、最初から完成形に近い動きを練習する方法です。パーツごとに分解せず、叩くべきタイミングで手足を同時に動かすことを意識します。
- 「右手と右足」の同時打ち + 「右手のみ」
- まず、1拍目の「ドンッ」と「チッ」を同時に叩く練習です。右足でバスドラムを踏むのと同時に、右手でハイハットを叩きます。
- 次に、1拍目の裏(「+」の部分)で右手のみハイハットを「チッ」と叩きます。
- これを「ドン・チッ、ドン・チッ…」と繰り返します。まずはこの2つの動きをスムーズに繋げられるようにしましょう。
- 「右手と左手」の同時打ち + 「右手のみ」
- 次に、2拍目の「タンッ」と「チッ」を同時に叩く練習です。左手でスネアを叩くのと同時に、右手でハイハットを叩きます。
- 次に、2拍目の裏(「+」の部分)で右手のみハイハットを「チッ」と叩きます。
- これを「タン・チッ、タン・チッ…」と繰り返します。
- 1と2を組み合わせる!
- いよいよ完成形です。1の動き(右手と右足同時→右手のみ)と、2の動き(右手と左手同時→右手のみ)を交互に繰り返します。
- つまり、「ドン・チッ、タン・チッ、ドン・チッ、タン・チッ…」となります。これが基本の8ビートの動きです!
最初は超スローテンポで、一つ一つの動きを確認しながら行いましょう。焦りは禁物です!
練習法2:パーツ別練習アプローチ
こちらは、まず右手(ハイハット)の動きを安定させ、そこに他の手足を徐々に加えていく方法です。一つずつクリアしていく達成感を得やすいかもしれません。
- まずは右手(ハイハット)の8分音符を完璧に!
- メトロノームや曲に合わせて、ひたすら右手でハイハットを均等な8分音符で叩き続けます。「チッチッチッチッ…」と、この刻みが安定することが全ての土台です。テンポはゆっくりから始め、徐々に上げていきましょう。
- 右手の刻みに左手(スネア)をプラス!
- 右手の8分音符が安定してきたら、左手のスネアを加えていきます。タイミングは2拍目と4拍目の頭です。
- 右手は「チチチチ チチチチ…」と刻みながら、左手を加え、「チチタチ チチタチ」と叩きます。最初は右手がブレたり、左手のタイミングがずれたりするかもしれませんが、根気強く続けましょう。
- 手のリズムに右足(バスドラム)をプラス!
- 右手と左手のコンビネーションに慣れてきたら、いよいよ最後のパーツ、右足のバスドラム(または足踏み)を加えます。タイミングは1拍目と3拍目の頭です。
- 両手では「チチタチ チチタチ…」と。そこに右足を「ドチタチドチタチ」と加えます。これが同時にできるようになったら、8ビートの完成です!
私のこれまでのレッスン経験から言うと、体感としては「練習法1: 手足を同時に動かすアプローチ」から入った方が、スムーズに8ビートの形を掴める方が多いです。
ドラムは結局のところ、手足をバラバラに動かすのではなく、「このタイミングで、どの手足が一緒に動くか」を体に覚え込ませる側面があります。最初にその「同時打ち」の感覚を掴んでしまう方が、後々応用が利きやすいのかもしれません。
もちろん、これはあくまで私の経験則です。あなたが「ちょっと手足を同時に動かすアプローチが難しい…」と感じるなら、「練習法2」が合っているかもしれません。大切なのは、自分に合った方法で、楽しみながら続けることです!
初心者が陥りやすい「2つの壁」とその乗り越え方
練習を始めると、多くの方が同じような壁にぶつかります。でも大丈夫です。それは誰もが通る道であり、必ず乗り越えられます。ここでは、よくある症状とその対策をお伝えしますね。
症状1:右足(バスドラム)と左手(スネア)が一緒になる
スネアとバスドラムが一緒になってしまう症状は、全員に当てはまると言っても過言じゃありません。 1拍目にバスドラムを踏もうとすると、なぜか一緒にスネアも叩いてしまったり、逆に2拍目にスネアを叩こうとすると、バスドラムも一緒に踏んでしまったり…。体がまだ、それぞれの動きを独立して認識できていない証拠です。
対策:とにかく「ゆっくり」から!
焦りは禁物です。まずは、自分が確実にコントロールできる、信じられないくらいゆっくりなテンポで練習しましょう。
ゆっくりなテンポで、一打一打、「今は右手と右足」「次は右手だけ」「次は右手と左手」「次は右手だけ」と、頭で確認しながら、意識的に叩いてみてください。体が正しい動きを覚えるまで、反復練習あるのみです。ゆっくりで完璧にできたら、少しだけテンポを上げてみる。この繰り返しが、着実な上達への近道です。
頭では分かっているけど、「ゆっくりでしか出来ない自分が恥ずかしい…」と思う気持ち、大変よく分かります。しかし、ゆっくりやることは全然恥ずかしいことではありません。むしろ勇気を持ってテンポを落とすことこそ、かっこいいことです。
症状2:叩いているうちに、今どこを叩いているのか分からなくなる!
特に少しテンポを上げてきたり、集中力が途切れてきたりすると、「あれ? 今、何拍目だっけ?」「次はスネアを叩くんだっけ?」と迷子になってしまうことがあります。
対策:「歌いながら」叩こう!
楽譜のカウントや、リズムのフレーズを声に出しながら叩くのです。
リズムの音を口で真似る「口ドラム」も有効です。「ドン・チッ・タン・チッ・ドン・チッ・タン・チッ」のように歌いながら叩くと、リズムの流れを体感しやすくなり、どこを叩くかもイメージしやすくなります。
歌うことで、脳と身体の動きがつながってくる感覚が出てくるはず。自分が今どこを叩いているのかを把握しやすくなります。最初は恥ずかしいかもしれませんが、騙されたと思ってやってみてください!
元手不要!ドラムセットがなくても出来る、 自宅での練習アイデア
「ドラムを練習したいけど、家にドラムセットがない…」
日本の住環境ではドラムセットなど無くて当たり前。かと言って急に電子ドラムを導入するのはハードルが高いですよね。しかしご安心ください! ドラムセットがなくても、工夫次第で効果的な練習は可能です。
- スティック
- クッションや枕、雑誌、練習台など
クッションや枕、雑誌などはスティックで叩く練習台として使います。ドラム用の本物の練習台があれば、なお良いです。
- 右手でハイハットに見立てたクッションなどを、8分音符で叩きます。
- 左手でスネアに見立てた別のクッションなどを、2拍・4拍で叩きます。
- 右足で床を、1拍・3拍で踏みます。
最初は音がしないので物足りなく感じるかもしれません。しかし、手足の動きとタイミングを正確に体に覚え込ませることが、この練習の目的です。地味に思えるかもしれませんが、この基礎練習が、実際にドラムセットに座った時に驚くほど活きてきます。騙されたと思って一度やってみましょう。必ず効果を実感できます。
実際に曲に合わせて叩いてみよう!
基本的な練習を繰り返したら、 実際にあなたの好きな曲に合わせて8ビートを叩いてみましょう!
まずは、この記事で紹介した基本の8ビートだけでOKです。
曲を流しながら、その曲のテンポに合わせて、ハイハット、スネア、バスドラムを使って「ドン・チッ、タン・チッ、ドン・チッ、タン・チッ…」と叩いてみましょう。
最初から曲のテンポにぴったり合わなくても、全く問題ありません。途中でズレてしまっても、止まってしまっても大丈夫。まずは、音楽に合わせて体を動かし、リズムを刻むことの「楽しさ」を感じることが何よりも重要です!
曲に合わせて叩くことで、「この曲のドラム、実はこんなリズムだったんだ!」「ここのフレーズ、かっこいいな!」といった新しい発見がたくさんあります。そして、「もっと上手くなりたい!」「他のパターンも叩けるようになりたい!」という更なる意欲が湧いてくることでしょう。
最初は、あまりテンポが速すぎず、リズムが分かりやすい曲から始めると良いでしょう。しかし、あなたが「この曲でやってみたい!」と思う曲でも大丈夫です。なぜなら好きな曲を叩く!ということが一番のモチベーションになるからです。
まとめ
ここまで、8ビートの基本から練習方法、そしてその魅力をお伝えしてきました。
8ビートは、単なるリズムパターンの一つではありません。それは、あらゆる音楽に通じる基礎であり、ドラム演奏の楽しさを最初に実感させてくれる、魔法のようなビートです。
最初は難しく感じるかもしれません。手足が思うように動かず、もどかしい思いをすることもあるでしょう。でも、焦らないでください。一歩一歩、ゆっくりで構いません。大切なのは、諦めずに、楽しみながら続けることです。
この記事で紹介した練習方法を参考に、まずは基本の8ビートを自分のものにしてみてください。そして、勇気を出して、あなたの好きな曲に合わせて叩いてみましょう。きっと、これまで感じたことのないような、音楽との一体感、そしてドラムを演奏する喜びを体験できるはずです。
8ビートという扉を開けば、その先には無限のドラムの世界が広がっています。あなたはもう、ドラムの世界への第一歩を踏み出しました。今日から、あなたも胸を張って「ドラマー」です!
さあ、スティックを握って、あなたのビートを刻み始めましょう! あなたのドラマーとしての鼓動はまだ始まったばかりです!
コメント