- 「ドラムを始めたけれど、なかなかリズムキープが安定しない…」
- 「家でできる効果的な練習方法はないかな?」
- 「基礎を見直したいけど、何から手をつければいいんだろう?」
ドラムを演奏する上で、誰もが一度はこのような壁にぶつかるのではないでしょうか。特に、異なるリズムパターンを行き来する際に、テンポが走ってしまったり、逆にもたついたり…そんな悩みを抱えていませんか?
そうした悩みを解決するための、非常に効果的な基礎練習が、「チェンジアップ」です。私自身、20年のドラム経験と、講師としてのレッスン経験の中で、このチェンジアップがいかにドラマーの土台を強固にするかを感じてきました。
この記事では、ドラムの基礎練習の要である「チェンジアップ」について、その概念から具体的な練習方法、さらには応用まで、徹底的に解説します。
この記事を読めば、あなた「チェンジアップ」の必要性が理解できます。そして継続的に練習することで、安定したテンポ感を養い、スムーズなリズムチェンジを習得し、より表現力豊かなドラミングへの扉を開くことができるでしょう。
様々な音符を体に染み込ませ、ドラミングを新たなステージへと進めましょう!
チェンジアップとは
チェンジアップとは、一定のテンポを保ったまま、叩く音符の種類を次々と変えていく練習方法のことです。
例えば、メトロノームをBPM=100に設定したら、そのテンポの中で4分音符、次に8分音符、そして16分音符…といった具合に、叩くリズムの細かさを変化させていきます。
単に速いフレーズや遅いフレーズを叩く練習とは異なります。チェンジアップの練習を行う際に重要なことは「同じテンポ感の中で」音符の長さを叩き、コントロール能力を養うことです。
チェンジアップを練習するメリット
では、なぜこのチェンジアップ練習がそれほど重要なのでしょうか?そのメリットを4つ紹介します。
テンポキープ力の強化
例えば曲の中で、急にリズムが16分音符を使う細かいフレーズなったり、反対に4分音符を使用した大きな流れになったりすると、リズムが揺らぐこともあります。チェンジアップを練習して様々な音符に触れておくことで、元のテンポを維持する能力が格段に向上し、「走る」「もたる」といった癖の改善に直結します。
リズムチェンジがスムーズになる
曲中での異なるリズムパターンの切り替えや、フィルインへの移行などが滑らかになります。例えばリズムパターンやフィルインの中で16分音符から3連符に変わったとしても、一定のテンポを保てるようになります。
フレーズの表現力向上
様々な種類の音符を自在にコントロールできるようになることで、1つのフィルインの中に16分音符や3連符等を使えるようになります。様々な音符を使えるようになることで、表現力が格段に増し、選択肢も大きく増えるでしょう。
譜面読解力の向上
チェンジアップ練習を通じて様々な音符の実際の「長さ」や「タイミング」を体で覚えることで、楽譜上の音符記号が具体的なリズムとして素早く理解できるようになります。結果として、楽譜を見て音楽を把握する力が自然と養われます。
テンポキープ、表現力、読譜力とまさにドラマーが必要とする能力が磨かれる練習方法です。
チェンジアップの具体的な練習方法1:まずは4分音符、8分音符、16分音符から始める
チェンジアップを始めるにあたって、いきなり複雑なリズムに挑戦する必要はありません。まずは基本中の基本である4分音符、8分音符、16分音符から始めましょう。これらは音符の長さがちょうど半分ずつになっていく関係(倍のリズム)なので、比較的感覚を掴みやすいはずです。
4分音符、8分音符、16分音符については、以下の記事で解説しています。
- メトロノームでテンポを設定します。最初はゆっくり目(BPM=60~80)がオススメです。
- まず、4分音符を4小節叩きます。
- 次に、同じテンポのまま8分音符を4小節叩きます。
- さらに、同じテンポのまま16分音符を4小節叩きます。
- 同じ要領で、16分音符から8分音符へ、8分音符から4分音符へと戻ります。
- 2~5を繰り返します。
では、実際の譜面を見てみましょう。

ポイントは音が均一になるように、そしてテンポが揺れないようになるまで、じっくり練習することです。
チェンジアップの具体的な練習方法2:3連符を加える
基本の4分、8分、16分に慣れてきたら、次は3連符に挑戦してみましょう。ここから少し難易度が上がりますが、表現の幅を広げるためには非常に重要です。
3連符とは
3連符(Triplet)とは、1拍を均等に3つに分割した音符のことです。譜面は以下になります。

先ほどの4分、8分、16分のような「倍」の関係ではないため、切り替えの際にリズムの感覚が異なり、難しく感じます。
では、3連符を組み込んだチェンジアップの譜面を見ていきましょう。

切り替えのタイミングで、特に8分音符から3連符、3連符から16分音符へ移る際に、テンポが揺れないように注意深く練習しましょう。口で「イチト・ニイト」「タツタ・タツタ」と歌いながら叩くのも効果的です。
3連符の難易度が高く感じるのは、拍の頭で叩く手が入れ替わることになります。左右どちらの手で拍の頭を叩くか意識して練習しましょう。
チェンジアップの具体的な練習方法3:2拍3連を加える
3連符を加えたチェンジアップに慣れたら、さらにステップアップしてみましょう。次は2拍3連を加えてチェンジアップに取り組みます。
2拍3連とは
2拍3連とは、2拍分の長さを均等に3つに分割した音符のことです。1拍の中に収まる3連符とは異なり、拍をまたぐ感覚が必要になります。譜面は以下になります。

2拍分の長さで3連符を叩くと「タタタ タタタ」となりますが、この3連符の音を1つおきに叩くようなイメージです。(3連符の1番目、3番目、5番目の音だけを叩くイメージ。)
では、2拍3連を組み込んだチェンジアップの譜面を見ていきましょう。

2拍3連符は特に、拍の頭をしっかり感じながら、2拍で3つの音を均等に鳴らすことを意識してください。特に拍の頭を叩かない部分である、2拍目、4拍目を心の中や足踏みなどでしっかりと感じ続けることが大切です。鳴っていない部分にある拍の頭を感じることで、リズム全体が安定します。
チェンジアップの具体的な練習方法4:6連符、32分音符を加える
3連系のリズムにも慣れてきたら、さらに細かいリズムにも挑戦していきましょう。6連符と32分音符です。これらをコントロールできるようになると、より滑らかでスピーディーな表現が可能になります。
6連符とは
1拍を均等に6つに分割した音符です。感覚的には、3連符の倍のスピード、あるいは16分音符の1.5倍のスピードになります。「タカタカタカ」のような響きです。3連符系のフィーリング(シャッフルなど)を保ったまま細かい音符を使用する場合によく使われます。譜面は以下になります。

32分音符とは
1拍を均等に8つに分割した音符で、16分音符の倍のスピードになります。非常に細かい音符なので、正確に、かつ均一な音量で叩くにはコントロールが必要です。譜面は以下になります。

では、6連符、32連符を組み込んだチェンジアップの譜面を見ていきましょう。

6連符や32分音符のような速いフレーズでは、力まずにリバウンドを最大限に活用することが不可欠です。ゆっくりなテンポから始め、一音一音をはっきりと発音できるように練習しましょう。
チェンジアップの具体的な練習方法5:奇数連符にチャレンジ
基本的なチェンジアップに習熟してきたら、さらなる挑戦として奇数連符(5連符、7連符など)を取り入れてみるのも良いでしょう。
- 5連符 : 1拍を均等に5つに分割

- 7連符 : 1拍を均等に7つに分割

5連符、7連符は偶数で割り切れないリズムなので、独特の浮遊感や緊張感を生み出します。習得は難しいですが、使いこなせれば非常に個性的なフレージングが可能になります。
奇数連符の練習は、まずその連符だけを単独で練習しましょう。5連符であれば「しんぶんし・しんぶんし」、7連符であれば「アイスクリイム・アイスクリイム」など、言葉を当てはめて練習することが効果的です。
均等に割る感覚を掴めたらチェンジアップに組み込んでみましょう。
チェンジアップを練習する時のポイント
具体的な練習方法を理解したら、チェンジアップの効果を最大限に引き出すために、以下の点を意識して練習しましょう。
メトロノームを必ず使う
チェンジアップ練習にメトロノームは不可欠です。なぜなら、一定のテンポの中で様々な音符を練習することで効果を発揮する練習だからです。音符が変わるごとにテンポがヨレていては、練習の効果が半減します。必ずメトロノームを使用して練習しましょう。
表拍を強く意識する
演奏中にテンポを見失わないためには、常に「表拍」を強く意識することが極めて重要です。叩く音符の種類が変わっても、この表拍を基準として捉えることで、音符が変わっても一定のテンポで叩く対応力が身につきます。
ゆっくりから確実に行う
急いで速くしようとせず、まずは自分が完璧に、そして楽に叩ける「ゆっくり」なテンポで練習を開始してください。正確なタイミングと動きを確実に身につけることが、あらゆるテンポに対応できる技術の土台となります。ミスなく叩けるようになってから、焦らず少しずつテンポを上げていきましょう。
様々なテンポで練習する
1つのテンポでできるようになったら、他の様々なテンポ(例えばBPM=60, 80, 100, 120など)でも挑戦しましょう。異なるスピードで練習することで初めて、どんな楽曲のテンポにも対応できる、実践的な応用力が身につきます。
まとめ
チェンジアップは、地味な練習に思えるかもしれませんが、ドラム演奏の根幹を成すリズム感を鍛え、安定したテンポキープ力、スムーズなリズムチェンジ能力、そして豊かな表現力を手に入れるための、非常に重要な基礎練習です。
4分、8分、16分といった基本的な音符から始め、徐々に3連符、2拍3連、6連符、32分音符、さらには奇数連符へとステップアップしていくことで、あなたのドラミングは着実に進化していくはずです。
すぐに結果が出なくても、焦る必要はありません。大切なのは、日々の練習で継続して取り組むことです。一つ一つの音符と向き合い、メトロノームを頼りに、音符が体に染み込んでいく感覚をぜひ掴んでください。ある日突然、効果を実感する日が来るはず。
ただの基礎練習と侮らずに、まずはやってみましょう。基礎練習の中にもきっと奥深さ、楽しさを感じることが出来るはずです。楽しく基礎練習を行うことで、あなたのドラミングも強固になっていくはずです!
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